過去のアホ話


1997.05.28より設置


 VOW物件とInfoVOWだけではいい加減飽きてきたので、ちょっとばかり駄文を書いてみることにしました。思いっきり不定期に更新することでしょう。
 (注)この物語はフィクションです。実在の人物、団体等とは一切関係ありません。断じて、ありません。

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アホ話その11〜20 | アホ話その21〜


アホ話その1

 ペルーの日本大使公邸人質事件はなんとか解決した。トゥパク・アマルと名乗ったテロリスト達は全員射殺されたわけだが、この「トゥパク・アマル」ってのが、スペインの南米侵略に抵抗した古代インカ帝国最後の皇帝の名前だった、らしい。まさにラストエンペラー。
 しかし今回のテロリストと皇帝には奇妙な共通点がある。おそらくテロリスト達は「ときの強大な力に対抗する」という意味で「トゥパク・アマル」って言葉を使ったのだろうが、結局最後は破れてしまった。トゥパク・アマルの歴史は繰り返されたわけで、やっぱりこれって“親のインカが子に報い”とか言うのだろうか。言わないよ。

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アホ話その2

 友達の両親がアメリカ旅行に行ったそうで、たまたま私が遊びに行くとその話でもちきりだった。
「アメリカ旅行はどうでした?」
「ええ、面白かったわよ〜。むこうのセブンイレブンへ行ったら、日本と同じつくりなんだから。」
コンビニの商品配置には一定のパターンがあって、店内に入るとそのまま直進して弁当、牛乳、ジュース、酒類、雑誌と店の外周を一巡してレジに来るように設定されているという。どこの国でも同じようなものらしい。
「いやまあ、もともとアメリカが本家ですからね。」
「あらそうなの? でもダメね、むこうのセブンイレブン。寒いのにおでんがなかったんだから。」
「いやそれは売ってないんじゃ…」

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アホ話その3(1997.06.09.)

 いきなり身内の恥をさらすようだが、私の親父は痔であった。幸いなことに今ではすっかり完治したのだが、そこへいたるまでの道のりは決して平坦ではなかった。痔に関する書物を読みあさり、正しい食生活を送り、「痔と上手に付き合う」ようになるのに数年を要し、さらに痔の道を究めるべく精進した挙げ句に出会ったのがヒ○○○○堂であったのはまさに歴史の必然だった。
 痔疾の黄金郷ヒ○○○○堂。痔で彩られたいや血塗られたその歴史は、いまや夕闇に浮かぶ真っ赤な一文字「ぢ」の看板に結実している。
 さて、痔疾には多少の蘊蓄のあった親父ではあったが、そこは痔の道。やはり漢方薬に対する畏敬の念もあったのか、チューブ2本とヘラ1本という小包が届くまでにそう時間はかからなかった。赤茶色のチューブから絞り出される内容物はまさに黄金色。それをヘラでガーゼに塗布し患部にあてがう。そう、ただひたすら塗ってあてがう日々。やがて2本のチューブがヤドカリのように丸まった頃に変化は訪れた。
 悪化したのである。
 最初の頃は嬉々として黄金色を塗りたくっていた親父の手の動きが日を追って鈍くなり、子供だった私が親父の肛門に漂うただならぬ雰囲気を察知した時には、すでに肛門科専門病院に入院したあとであった。
 のちに親父が語ったところによれば、病室内の患者達には「人に言えない病気を共有している」という奇妙な連帯感があったという。しかも特筆すべきなのは、患者達は皆人一倍痔の勉強をし悩んだ末に必ず黄金色の洗礼を受け、そして親父と同様の顛末を経てこの病院に駆け込んだということである。それだけに彼らが抱く「ヒ○○○○堂は敵だ!」という共通認識には絶対のものがあった。これが患者達の連帯感を一層強固にするものであったことは言うまでもない。
 さてそんなわけで、親父は手術と専門治療を受けて無事家庭に凱旋し、今では快適な排泄ライフを送っている。

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アホ話その4(1997.06.23.)

 最近は何か社会的に大きな事件が起こると、それを元ネタにしたゲームがよく作られる。
 例えば、すでに古典の域に達しているのが「地下鉄サリンゲーム」、例えば「豊浜トンネルゲーム」、例えば「ペルー大使公邸人質救出ゲーム」、とかなんとか。あとのゲームになるほど扱いは小さくなったが、それでもマスコミやらワイドショーに絶好のネタを提供してくれたし、コメンテーターあたりは「けしからん」と憤ってみせたりする。なんか斜に構えた奴だと「あれはクソゲーだ」と評したりするのだが、そういう問題なのかしらん。
 ところでこういうご時世だと、当然、次回作は製作進行中であることが密かに期待もとい推測される「酒鬼薔(以下自粛)ゲーム」。これである。
 残された手がかりをもとに次第に犯人を追いつめていくという基本的な手法でせめたいところだが、ここはやはり犯人の立場になって考えるという選択肢も捨て難い。
「お、おいおい!」
こういう話を友人にしたら速攻でツッコまれてしまった。そりゃそうだろうな、こんなこと普通は思っていても口に出せるもんか、と思ったら、理由は他にあるらしい。
「おまえ、地下鉄サリンとか豊浜トンネルとかペルーってさあ、全部地下だとかトンネルが舞台じゃないの」
「舞台?」それは桧舞台なんだろうかと一瞬頭をよぎったが、口には出さなかった。
「だいたい今度の事件は校門の前と山なんだし、ゲームの背景が全然違うじゃないか」
こいつはこういう話をいきなり切り返してくるからあなどれない。そもそもゲームの背景などという問題なのか。まあ、こんな話を平然としている私と奴の精神的背景は似ているのかも知れないが。
「それじゃあさ」と私。「酒鬼薔(以下自粛)は校門から逃走する時に下水とか地下道を使ったのかな」
「そうだな。そうすればゲームのテーマにも合ってくるな」
どんなテーマだ。
「もし校門前から“タンク山”まで下水がつながっていれば辻褄も合うだろうし、下水が無かったら、途中から穴を掘ってつなげりゃいいし」
「そりゃ無理だろう。機材とか抱えてたら見つかっちまうよ」
「無理じゃないさ。一般の路上じゃなくて民家の地下から掘るんだよ」
「酒鬼薔(以下自粛)の家か?」
「それじゃ捕まるだろうから、他人の家から掘る」
共犯の存在か。だが今回の事件は単独犯じゃないかと言われてるから、少々無理があるだろう…ん? ちょっと待て、この話を切り出したのは私の方だぞ。完全にリードされてしまっている。いかんいかん。
「いくらなんでも、それは無いだろう。だいたい単独犯だと言われているんだし」
「だからさ、新聞で広告を出すんだよ。懸賞金付きでさ」
「どんな懸賞金だよ。捕まっちまうだろが」
ますます主導権を握られている。
「いやいや、狙った家の人に“懸賞金が当たったから取りに来てね”と言うんだよ。受け取りに家の人が出てった隙に、その家の地下から掘り進む」
「……おまえ、それってシャーロック・ホームズの赤毛連盟が元ネタじゃないのか?」
「あ、わかった? でも懸賞金は赤毛じゃなくてホモの奴にしか渡さんのよ。だから赤薔薇連盟。ほら薔薇がキーワードになってる」
「あのなあ」
「酒乱の懸賞金でも」
「鬼はどうするんだ、鬼は。だいたいゲームになるのかそれは」
 と、こういうバカな会話をしている間にも、「酒鬼薔(以下自粛)ゲーム」は着実に完成へと近づいているに違いない。事件が解決するきっかけがこのゲームだったりしたら、などと考えるとさすがに希望的観測な臭いがプンプンだが、犯人自身が製作していると考えられなくもない。なんせホームページを開設していたという情報もあるそうだし。
 ところで、そのむかし「モリコ脅迫事件」というなかなかに時事ネタなゲームが販売されたこともあったが、あの時はマスコミなどから批判はされたのだろうか。いつの時代にも似たような話が転がっている。

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アホ話その5(1997.07.04.)

 さて、恒例の夏休みが迫り来る季節となってきた。いや、一列縦隊で冬休みも後方に控えているし、地方によっては秋休みがその間に迫る場合もあるらしいが、私個人としては2人3脚がうれしい。ま、それはそれとして。
 夏休みというのは、てっきり学生だけに適用される行事だと私は思っていたのだが、どうやら社会人もその呪縛から逃れられない、ということが先頃判明した。なんと職場の上司から、夏休みの日程を計画表として提出せよ、と命ぜられたのである。いや勿論それ自体はわかる、わかるのだが、まさか円グラフや帯グラフで一日の行動予定表まで作らされるのではと、一瞬、脳裏をかすめてしまった。これで夏休みの友とか自由研究まであったらと思うと心臓が。どきどき。
 しかし円グラフや帯グラフなどというのは、だいたい作ったところで実行できたためしがない。しかも事前に先生に見せて承認を得なきゃならないから、平時よりむしろ内容が殊勝なものにならざるを得ない。ここらへん、先生に気に入られようと健気な努力をしていたんだなあと思わず遠い目になる私。あまりにも殊勝すぎて、「すいみん」の前後に「きしょう」「きがえ」を各5分とか、食事の前に「てあらい」を1分とかしたもんだから、休み前から私はすでに敗北していた。
 ところで最近の自由研究というのは何があるのだろう。相変わらずあさがおの観察とか昆虫の飼育とかいって、選択肢が用意された中での自由なのだろうか。やはりここで独創性を発揮しないといけない。だが学研の付録みたいにカブトエビの飼育とかいうのも面倒なので、手軽さという点からたまごっちに白羽の矢をたててみる。それもぐさぐさと3本くらい。これの自由研究と称して、偽物にはどれだけ種類があるのかなどとかき集めたら、相当な研究成果が期待できるに違いない。それは飼育じゃないだろうという指摘はさておいて、いやいや、自分で作るたまごっちというのもいいかも知れない。自分でドット絵を描いて、成長パターンをプログラムして、それをオリジナルのたまごっちとして他人に遊ばせるのである。絵を描いている時点で既に工作という気もするのだが、そこは先生が許さなくても私が許す。
 そんなわけで、トップブリーダー推奨の餌を与えるとよく成長するゲームは完成した。猫はねこっち、犬はいぬっち、猿はさるっち。
 いかん、いかんぞ。どれも安易すぎて独創性のかけらも無いではないか。ここはやはり大いなる飛躍が必要である。
 猫の生首を餌にさかきっち。
 やめろよ。

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アホ話その6(1997.07.10.)

 その意味は良く知らない。知らないが知っている。その場面に合ってそうなので言ってみた。皆さんは、そんな経験ないですか? あ、ないですか。そうですか。おかしいなあ、一つくらいあっても良さそうなのに。話の前提を崩さないで下さいよ。あと続けるの大変なんですから。え、あ、いいんですか? すいません。それじゃあるということで。
「気の抜けたビールみたいだ」 と言われ…なんですか、そんなに話が唐突ですか? いえいえ、私の日常会話ではよくあるんですよ。いいじゃないですか、べつに。いやだから、とにかく、気の抜けたビールみたいだと言われたんですってばっ。ぜぇはぁ。わかった、わかった、わ・か・り・ま・し・たっ! 喫茶店で、同席していた、他のお客の、会話に、私が途中から加わったんですっ。これなら文句ないでしょう? いちいち細かいんだから。 すると同席していた別の人が言うんです。
「薬味のないソバみたいだ」
いいですよね、語彙力のある人って。私そういう例えがとっさに出ないんです。でも会話のキャッチボールしてたら、自分だってなにか言わなきゃいけないって、義務感みたいなの、生じるじゃないですか。よせばいいのに、言わなきゃいけないって思っちゃうんです。
「題名のない音楽会みたいだ」

 なに? この間は。
 もしかして、キャッチボールで暴投? きみそれは違うよって、そんな真顔で言わないで下さいよ。ちょっとボケてみただけじゃないですか。いやだなあ、ボケとツッコミって会話の基本ですよ。単なるお・ふ・ざ・け。解ってくださいよ。そんなんじゃあなた出世できませんよ。あ、自営業。そりゃどうも。いやあ、あはあは。忘れて下さい。私が悪かったです。
 そんじゃ気を取り直して。
 ねえねえ、そこのお姉さん。お姉さんなら、今の冗談解ってくれましたよね。
「そうよね、愛のない結婚とか、金のない人生とか」
いや続けなくていいんですってば。

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アホ話その7(1997.07.16.)

 世の中には、滋養強壮という名の下に様々なドリンク剤が氾濫している。オロナミンC、リポビタンD、ゼナ、ユンケル皇帝液など、一見ビタミンものからインド・中国風にいたるまで、その種類たるや実に膨大である。好きな者であれば一覧表を作ったりボトルを収集していそうだが、なかには利き酒ならぬ利きドリンクの出来る輩も、あるいは存在するかも知れない。しかし、そんなビタミン・インドならいざ知らず、用途を想起させるに非常に直接的な名称のドリンク剤もまた、数多く存在する。
 ガンバルマン。
 いきなりこれである。一部外来語との組み合わせを予想させるが、日本語どうしの組み合わせ、という期待も捨てきれない。ラベルには○と▽が組み合わされた人間、のようなものが、今にも走り出しそうに片腕を振り上げてガッツポーズをとり、しかもガンバルマンと書かれたタスキまでかけている。なんなのか、これは。これを飲んで走ることを頑張れと言うのか。それとも100m全力疾走するのに等しいエネルギー消費行為を、一見スポーツ風の絵柄で暗示しようとしているのか。こんなことであれば「おとうさんがんばって」などと無邪気にラベルを貼っている桃屋の方がまだ潔い。
 さりとて、タフマン。
 ガンバルマンと同様、外来語との組み合わせを模索しているが、有名であるにも関わらずラベルのデザインはより直接的である。○を2個に棒一本という組み合わせと、光輝くゴールドなデザインがまさに直球勝負である。そういう点が潔くも感じられるのだが、直接表現を避けて想像行為を楽しむという日本伝統のわびさび文化が全く感じられない。だがそう思わせつつも、あんたがたタフマン♪ などと誰もいない部屋で一人歌わせてしまうあたりが実にヤクルトである。
 ところで、そんなドリンク剤が満天の星空を覆いつくす頃、私は多数の同僚とともに残業するよう命じられていた。事務室に置かれたさして大きくもない冷蔵庫には、この日を待ちわびていたかのようにガンバルマンが120%充填され、まさに対ショック・対閃光防御な波動砲の様相を呈していた。
 発射されたのは残業開始からちょうど3時間後のことである。10分ほどの休憩時間に、疲れたOLやらサラリーマンらが冷蔵庫前に長蛇の列を成し、配給係を仰せつかったOLから次々とガンバルマンを手渡される。そんな疲労しきった人間達は、隙あらば理性を失う準備をしている。飲み干したガンバルマンをごみ箱に捨て、席に戻る途上の係長もそんなひとりだった。他に同様の進路にあった者は、私と某OLの約2名。ぼけっと歩くふたりの背後から、彼は申し訳なさそうにつぶやいた。
「ガンバルマンか……出たらごめんね」
なにが出るのだ、なにが。しかしそう思うよりも早く、なにが出るんですかと私は反射的に問いを発していた。私の隣にいた某OLは、気付いていたが反応出来なかった、と後に語っている。
「いやあ、なに、あはは…」
乾いた笑いを残しつつ彼は疲れた足取りで我々を追い越して行く。
 出たらごめんね。
 この言葉から様々な意味が右脳を跋扈したが、そのどれもが説得力を欠いていた。やはり、ドリンク剤はわびさびの世界なのかも知れない。

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アホ話その8(1997.07.24.)

「いつも思うんだけど、やっぱこれって腹立つよな」とは向かいに座る同僚・柴田(仮名)の弁である。
 彼がそう言って差し出したのは、某官庁と取り交わしたらしい一通の契約書であった。お役所相手の仕事で腹が立つのは毎度のことだが、今回はよほど無理難題をふっかけられたのであろうか。
「だって見てみろよ。発注者が甲で受注者が乙なんて、役人連中の御上意識がありありじゃないか」
「へ?」
予想を越えた発言に、私は困惑してしまった。だいたい甲乙なんて文字は、発注者・受注者を識別するための単なる記号でしかないだろう。それに、契約相手がお役所だろうが同じ民間だろうが、金を払う立場の方が基本的には上だと思うのだが。しかし柴田の見解は異なるらしい。
「いや、子会社だとか下請けだとか、うちの会社がそういうのなら理解できる」
「はあ」
「役人なんてのは俺達庶民から税金を巻き上げて、それを使っているだけだろう。他人の金を使うだけなのに、なんでそんなに偉ぶる必要がある? むしろ“使わせていただいてます”ぐらいの謙虚さがあって然るべきだろう」
なるほど、そういうことか。それなら彼の意見にも一理、あるのか? 私がそこはかとない疑問を感じて小首をかしげている間にも、柴田はなお熱弁をふるう。
「ま、あいつらとの契約に限っていえば甲乙を逆に書くのが本来だな。だがこちらにも儲けさせてもらっているという義理がある。そこでだ」と言いかけたところで、彼は大きく咳込んだ。げふっげふっ。
こらこらこら、儲けさせてもらっているだとか、義理だとか、人聞きの悪いことを言うんじゃない。とりあえずその部分は無視しよう。
「一気に言い切ろうとして途中で咳するなよ。お前、運動不足じゃないのか?」
「ええい、うるさいっ。俺の運動不足より納税者の権利のほうがはるかに重要だぞっ」と、柴田はぜぇはぁ息を切らしながら口角泡を飛ばしまくる。権利とかいう話以前だな、これは。
「そこでだ。せめて両者が対等でなきゃならん」
「例えば?」
「発注者Aに受注者B。どうだ、これなら甲乙みたいに上下関係とはならんぞ」
「いいとは思うが、お役所の文書にAとかBなんてローマ字が入ってたら、前例がないとか書式が違うとか言い出す輩が多くないか?」
「お前が小役人のようなことを言ってどうする。それじゃどうすればいい」
「発注者“い”に、受注者“ろ”」
「馬鹿だね、おまえ。それじゃ長い文章の中で区別がつけにくいだろ」
「カタカ…」
「同じだ、同じ」
まだ言い終わってないぞ。むずかしい男だな。しかし要するに、パッと見分けがつけばいいのだろう。それなら単独での使用頻度が低い字を割り当てれば良いではないか。
「半濁音ならどうかな」
「半濁音?」柴田は眉間にシワを寄せつつ訝しげに復唱した。なんだそれはと言いたげであるが、そういう挙動はこのさい無視する。
「発注者“パ”に、受注者“ペ”」
「林家一門じゃあるまいし、そんな間抜けな契約書があるか」
もとはと言えば、お前がくだらんことを言い出すからだろうに。失礼な奴だ。
 こうして些末事に拘泥する柴田によって究極のペーパー案までもが却下され、契約書談義における両者の温度差はさらに広がるばかりであった。だがいよいよ手詰まりかと思い始めていたその時、先程来黙々と事務をこなしていた妙子さん(仮名)が、突如低気圧を伴ってあらぬ方向から乱入してきた。
「ねえねえ、発注者“鶴”と受注者“亀”っていうのはどうかな。どっちもおめでたいし。あ、でも『鶴は千年・亀は万年』って差があるからダメだね」
自分の発言で自己完結してどうする。こちらからツッコミようが無いではないか。しかし柴田は「それいい、いいよ!」などと、まさに我が意を得たりと狂喜し、そのままワープロへ向かって使うあてのない鶴亀契約書(案)をいそいそとタイプしはじめた。いまは仕事中なんだけどな、一応。
 こうして、日本語運用に一大革命をもたらすであろう鶴亀契約書(案)が密かに作成されたわけだが、妙子さんの尽力によりいまだ活躍する機会は与えられていない。
 今後とも柴田の人生と境遇に鶴亀が多からんことを祈るばかりである。

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アホ話その9(1997.08.13.)

 某月某日未明、私の体はついに夏風邪に占領されてしまった。
 占領前の1〜2週間は昼夜にわたる絶え間ない寒暖差攻撃を受け続け、この間の損害もとい体温は37℃を境に3歩進んで2歩下がるような状態。ようするに微熱が続く、というものであった。
 夏風邪の基本的な戦略は、「ちょっと風邪ひいたかな? でも大したことないな」と、微熱で敵を油断させつつ徐々に体力を削ぎ、ついにはダウンへと到らせるという非常に狡猾かつ効果的なものである。微熱による体力へのヒット・アンド・アウェイ、あるいは食欲不振による兵糧責め等、夏風邪の戦術は孫子の兵法を彷彿とさせてくれる。ナポレオンはロシア攻略において冬将軍に破れたが、私は夏風邪大将の前に斃れてしまうのであろうか。私の運命や如何に! ばばーん!
 さて、体内防衛軍が夏風邪軍と激烈な攻防戦を繰り広げている頃、職場大本営ではこのまま職場に踏みとどまるのか、それとも名誉の早退をするのかについて無責任な分析が進められていた。同席したのは参謀の柴田(仮名)と妙子さん(仮名)。
 柴田は「夏風邪? 俺にうつすなよ」と、いきなり適切な助言。ありがとね。妙子さんは妙子さんで「ねね、あたし夏風邪ってひいたこと無いんだけど、どんな感じ?」なんて目を輝かせている。ふつうはもっと心配してくれません? まあ、37℃前後の微熱が続いてますよ。でも気温が高いからそんなに寒いとは感じないかな。すると彼女は「へえー、37℃って、あたしの甥っ子もそれくらいだけど全然平気だよ」などと血迷ったことを曰いてくれる。彼女の家系にはつくづく変人が多いらしい。
 「うそだろう? それじゃ病気だよ」とすかさず反応したのは柴田。「妙子さんの甥っ子じゃあなあ」などと私も合いの手を入れていた。しかし聞いていると、まだ2歳にもならない妙子さんの甥っ子は、常時37〜8℃の体温があるらしい。彼女の親戚だけにさもありなん。しかし2歳……ちょっと待て、2歳の子供ってどうやって体温を計るんだ?
「えーとねー、脇の下とか口に入れると危ないから、お尻で計ってるの」
やっぱり。妙子さん、それ直腸体温だよ。
私は半ば呆れながら答えつつ、眉間のシワがいつもより3本は増えていることを自覚した。
「なにそれ?」
直腸の体温ってのはね、脇の下より常に2℃くらい高いって言われてるんだよ。それだったら、妙子さんの甥っ子だって37℃にも8℃にもなるんじゃないかなあ。
「あ、そうなの? 初めて聞いた〜。でもさ、でもさ、それじゃあ夏風邪も直腸体温だったら平熱になるんだよね」
妙子さん、人の話聞いてる?
「それならおまえ、もう一度直腸で計り直せよ」
貴様まで暑さで狂ったのか、柴田。
 すでに早退への決意を固めようとしていた矢先のこの会話だけに、私は机に突っ伏してしまった。だがなおも二人の直腸談義には花が咲く。花の種類はおそらく菊であろう。
「もっとお尻で手軽に計れたらいいのにね」
「直腸専用の体温計ってあるんかな」
知るかそんなの。
「なんかアヤシイ通販とかであったらやだよねー、“一日たった5分のトレーニングでほらこんなに!”とかって」
「いやいや、“直腸体温で私の人生が変わりました”とかさ、“いま、直腸が熱い! 今年は直腸体温が流行のきざし”ってのもいいぞ」
いいわけないだろ。柴田、なぜそんなくだらん話がスラスラと出るんだ。
「コードレス直腸体温計!」
「いつでも、どこでも、誰とでも!」
…………おまえら。
 私はうつむきながら席を立ちそのまま早退届を上司に提出したが、背後ではひたすら直腸の2文字が連呼されていた。
 翌日、私の体内防衛軍が敵に大敗を喫したのは言うまでもない。

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アホ話その10(1997.09.09.)

 先日、私の職場にOAエプロンなるものが導入された。巷で流行りのいわゆる“電磁波防止グッズ”のひとつである。その筋によると、これらの商品はどれをとっても電磁波防止効果があまり期待できないということらしいが、そうした疑問を投げかける隙も与えず、パソコンを扱う者は全員着用させられてしまった。
 ところでこのエプロン、あやしげな電磁波防止効果よりもむしろ視覚的効果の方が問題である。さいわい私が着用したのは「事務用、事務用、事務用ぅぅぅ!」と全方位に向けてビッグバンするかの如き青色無地のエプロンであったが、淡いピンク色を身にまとい接客している柴田(仮名)なんぞは、存在そのものがすでにビッグバンと化している。まだフリルや花柄が付いてないだけマシとも言えるが、応対された相手が戸惑い、次いで得心し、最後に“外せばいいのに”と本人の目の前で感情を発露するさまは見ていて同情を禁じ得ない。だから私はやめろと言ったのに。
「いやあ参ったよ、やっぱこれって恥ずかしいわ」などと接客を終えた柴田は、恥ずかしいと言うわりには嬉しそうな表情で席へ戻ってきた。
「じゃ、脱いで応対しろよ」
「いやまあ、話の種にはなったけどね。『ウチも電磁波のことは気になるんですけど、ちょっとそのエプロンが』なんて言ってたし」
「そりゃあとでもの笑いの種だな」
 しかしこの手の商品はなぜエプロン型しかないのだろう。もちろん男が着ても悪くはないが、本人はじめ周囲が受ける心理的な抵抗感はかなり大きい。カタログを眺めてもエプロン以外に選択肢はなく、しかも着ているモデルは皆女性である。せめてジャケット型やスーツ型などはないのだろうか。
「仮にコストが問題だとしても世の中の半分は男なんだぞ。男性用とか学校用とか、大きい需要を見込める商品をもっと作らないと」
そう言うわりに柴田は相変わらずエプロンを着けたままである。
「そうかなあ、学校用はエプロンで充分だと思うけど」
「いやいや子供は電磁波の影響を受けやすいんだ。やっぱ日常から電磁波に備えておかないと」
「日常から?」
「OAセーラー服」
柴田の自然な口調で一瞬聞き流しそうになったが、単語の組み合わせはかなり破綻している。
「他にもOAジャージ、OAブルマー、それにOAスクール水着だ」
「それじゃ電磁波より変質者が問題だぞ。だいたいブルマーだの水着だのパソコンに…って、なに?」
隣に座る妙子さん(仮名)に腕をつつかれて私が振り向くと、彼女は下を向いて肩を小刻みに震わせている。笑いをこらえているらしい。
「どしたの?」
「あのね…スクール水着がシースルーだったらやだなあって」
「ほほ〜、電磁波は止めるけど肌は透けちゃう! って、あるかそんなの」
一応ツッコミはいれてあげたが、そんなことで笑いをこらえてたのか。
「いやあ、俺なら裸にOAエプロンだな。男のロマンじゃないか、なあ?」
“なあ”って俺に同意を求めるんじゃない。
「じゃあ裸にネクタイは、女のロマン?」
妙子さん…。
「そーそー、OAネクタイって電磁波防ぐやつね」
 結局、その日の柴田は帰るまで一度もエプロンを外さず、職場内には軽やかなピンク色の電磁波が乱舞し続けていた。

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 あ、そうだ。新世紀エヴァンゲリオンってアニメがあるよね。あのアニメ知ってて、しかもパロディの世界を楽しめる人にはこれ読んでもらったら楽しいかも。ちょっとだけサービスサービスゥ。ついでにこれも。
 さらにゲームネタに挑戦っ。サクラ大戦を知っているならこれだっ!