01.なぜ基礎が大切なのか
 数学に限らず、世の中には、あることをできるようになるためには、基礎が大切であると言われることが多い。すべての事柄に対して当てはまることかどうかはわからないが、基礎は大切である。
 もちろんここでは、受験数学という意味での基礎の大切さについて考えてみることにしたいが、このことは、多くの事柄に通ずるものであると確信する。

 受験生にとっては、ある目的がある。その多くは、大学に合格したいという思いである。しかし、当然であるが、目標が高ければ高いほど、最終到達点となる実力を身につけるのは難しく、至難の業である。その実力を身につけるためには、いくつかの基本事項が身についていることが大前提となる。
 特に数学の場合、入試レベルの問題ができるようになるということは、いかにして複合的に基本的な内容を筋道を立てて使えるのかに負うところが大きい。基本的な事柄は、教科書や総合参考書に詳しいわけだが、その内容をいかにして自分の頭の引き出しからいつでも(できればすばやく)出せるようにしまっておくかが大切である。そして、その事柄を問題に応じて結び付けて使えるかどうかなのである。
 入試初級の問題は、教科書や総合参考書の問題そのものにちょっとテクニックを要するようなものが多い。パターンそのものが1つの入試問題になっていることもあるのだ。それは、基本的なレベルが押さえてあれば、何とかなると言える。
 しかし、難易度が中級まで来ると、複合的な要素がどんどん出てくる。そこで問われてくるのは、基本的な知識である。基本的な知識が1つでも欠けていると問題を解くことができない。そこで、入試問題の目的である幅広い視野や、分野をまたがっての知識が問われるわけである。そこで、そこまで学んできた基本的な力が問われることになるのだ。基本的な力が完成していればいるほど、問題を解ける可能性が高くなる。

 多くの受験生が、受験勉強を始めたいと考えたとして、まず何をしたらよいのかを聞いてくる。そのときには、まずは総合参考書なり、授業で活用している教科書傍用の問題集などで基本事項ををいかにして押さえるのかが大切であるといいたい。レベルが高い大学に合格したい。そうなるため、いきなりハイレベルの問題を解く人がいる。それでできる世の中には神業的な天才がいるのは確かである。しかし、よほどの天才でない限り、それは無理である。数学は、先人が長い歴史を通して作ってきた学問である。そんな長い歴史の話をすぐに自分で見つけられるほど甘くない。
 基本事項を押さえることによって、受験勉強のレベルが少しずつ上がったときに、スムーズに勉強を進めることができる。難しい大学を受けようとするときには、あるときに難易度を一気に上げた勉強をしなければならなくなるときがやってくる。そのときに、わからずに解答を見たとき、基本事項が当たり前にように引き出しに入っていなければ、結局基本の基本まで話を戻して考えて、問題を解かなければならない。それは、大きなタイムロスとなる。直前期ともなるとなおさらである。もっとひどくなると、ぜんぜん基本が身についていなければ、解答をただ暗記してしまうようなうわべだけの勉強しか展開できないことになってしまう。これが一番怖い。

 『基礎力がない』ということは、受験直前には数学の勉強そのものが崩壊しかねない重大事態となる。こうなれば、受験校のランクを下げるしか方法があるまい。そうならないためにも、現役生にとっての夏休みまでの時間は非常に重要な時期であるといえる。ここで基礎ができていなければ、あなたの実力のピークは入試にはもってこれない。『受験の天王山』と夏休みが言われているゆえんである。
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