ふたつの指輪
『そろそろ、こんな関係終わりにしないか?』
プロポーズのつもりの言葉に君は
「わたしも、ずっとそう思っていたの」
と、ほっとしたような笑顔を見せた
同じ方向を向いているとばかり思っていた僕達の視線は
いつのまにか少しずつ方角がずれて
もう、交差することはなくなってしまったのだろうか?
僕はなぜか学生時代に苦労した
数学の方程式のことなんかを考えていた
「ほかのものは、あとで送るから」
去年の誕生日プレゼントの指輪を外して
君は、笑顔で僕に渡した
昨日買ったばかりの指輪を入れてある右のポケットに
わずかにぬくもりが残っている去年の指輪を入れる
ふたつの指輪をどうすればいいのだろうか
『捨てるのはもったいないから、次の彼女のためにとっておくよ』
せいいっぱいの強がりだったのに
「捨てなさいよ。そんなもの、もらってもうれしくないわよ」
君は静かに言う
いや、この指輪をするのは、僕が一緒にいたいと思う人は
君しかいない
『もう一度、初めからやりなおそう。
もう一度、同じ方向を見つめていこう。』
君のアパートに着く前に
ふたつの指輪を渡して君に言うよ
がんばれ、俺!!
