スタンドがその声をなくす。
フィールドの少年達がその動きを止める。
静寂に長くのびるサイレンの音。

真棹秤子は食器を拭く手を休め、じっと瞑目していた。
そしてテレビから流れるサイレンが、あるべき球場のざわめきに還る。

目を開けて映るタリウスの窓は、八月の青。
「今日も暑いなぁ……」
五十三年前の今日も、雲ひとつない空だった。


── そう遠い昔の話ではない。