
Hickok 539Cを使った定電圧放電管の試験。(VR TEST VOLTS)

まず試験されるべき定電圧放電管(VR TUBE)のためにセレクタ−を設定します。
例・・・VR-150MT(米国では0A2・・・最初の読み方はゼロではなくオー)を例とします。チューブデータ欄の0A2を参照してセレクタ−を設定します。
FILは必ずオフにします。設定・・・AP-05020。レンジはあとで述べるようにHレンジになっていることを確認します。なおデータ欄のMIN
MUT. COND欄の150Vという表示は無視しても構いません。取説にも「名目上の電圧である」と述べています。539C試験器だけでは悲しいことに電極間電圧(後述)は読むことはできません。(^_^;)
@バイアス電圧調整用のツマミとVR電圧調整用のツマミの中間にあるトグルスイッチをVR調整用の方向に倒します。

AファンクションスイッチをVR−TESTにします。レンジの位置はHです。(これは重要で他のレンジになっていると大事なメーターが振り切れてしまいます。下手をするとメーターが切れることも有り得る事ですので忘れずに行うことが大事です)

BVR電圧調整ツマミを反時計回りに完全に回しきります。
C電源調整ノブを時計回りに完全に回しきります。

DP4−LOOKを押します。
E定電圧放電管VR-150MTを539C試験器のMT7ソケットに挿入し、電源を入れます。
FゆっくりVR電圧調整ツマミを今度は時計回りに回します。
GGMメータの0−200Vのスケールを読みます。Fを回すにつれてだんだんと大きく振れてきます。

H155Vを過ぎたあたりから今度は電流計に着目し斬増的に電流が流れることを確認します。539C試験器の場合、電流計はバイアス電圧計と共通です。(100mAレンジです)このとき定電圧放電管に放電が開始されますので定電圧放電管自体にも着目します。
I日本の定電圧放電管VR-150MTはHickokのデータではOA2=5〜30mA、レギュレーション2Vとなっていますので各メータの指示を見てこの範囲に入っているか確認します。
2つのメータをみなければならないのでチョット大変ですが何回もやっていると要領がわかってきます。
ゆっくりVR電圧調整ツマミを時計回りに回してみますと正常であれば途中で電圧が止まる範囲があることに気がつくはずです。その箇所を見つけるのがこの試験の勘所かと思います。この箇所が見つからない球や平坦部が非常に狭い球は不良品といえるでしょう。(下の図参照、見えにくいですが上が良い例、下が悪い例です)
今回3本の定電圧放電管VR-150MTを試験したもの、この結果比較的良いのは1本、やや良好が1本。不良は1本でした。いずれもオークションで入手したものですが高い買い物をした気分でした。恐らく古い測定器などの抜き球だったのでしょう。写真の3本のうち真ん中が一番性能がいいものでした。

Aは放電地点です。5mAと書きましたがもっとちいさな電流で発光します。許容最小電流は一般に5mAと決められているようです。A−B間は平坦部分ですがやや右肩あがりになっています。高低差(REGULATION)はHickokのデータでは0A2で2Vとなっています。試験器で左図のような概念が取れたらまず合格です。
これはまったく悪い例です。この例では現物の放電は確認出来たのですが何が原因なのか電圧の平坦部分が全く有りませんでした。電流は一応流れました。実用性全くなし。写真の中の3本のうち1本が該当しました。
まあ539Cのような高価な測定器を使わなくても可変可能な高圧直流電源と電圧計、電流計があれば試験回路の自作が容易ですので試してみるのも良いでしょう。定電圧放電管の1本の測定ぐらいで539Cを壊してしまったら何にもなりません。
■実際の放電開始電圧は球のバラツキのためちょっきりでは有りません。
国産球VR150MTでは160V付近から放電するものが多いです。

■ここまで書いてきてUS球と国産球に規格上の差異があることに気がつきました。いろいろ資料をめくってみたところ放電開始電圧のみが違い残りの項目は同じです。しかし放電開始電圧の違いはこの試験には関係ありませんので問題はありません。電圧変動範囲で5〜30mAまで流してみて平坦かどうかを見るだけですから。。
| 放電開始電圧 | 品名 | 出典 | |
| US | 155V | OA2 | GE社 Essentiai Characteristics |
| JPN | 165V | VR150-MT | 全日本真空管マニュアル |
■そこで今回 私としては滅多に無いことですが3本の球を計測してみました。指示器はいずれも539Cです。
A放電管は160V位から放電していました。(実際には取説には書いていませんのでしません)
| VR電流 | A放電管 | B放電管 | C放電管 |
| 単位mA | 単位V | 単位V | 単位V |
| 1 | 161 | 166 | 155 |
| 2 | 162 | 166 | 156 |
| 3 | 162 | 166 | 157 |
| 4 | 162 | 166 | 168 |
| 5 | 162 | 166 | 169 |
| 6 | 162 | 166 | 169 |
| 8 | 162 | 166 | 170 |
| 10 | 162 | 166 | 170 |
| 12 | 162 | 166 | 178 |
| 14 | 162 | 166 | 180 |
| 16 | 162 | 166 | 182 |
| 18 | 162 | 166 | 183 |
| 20 | 162 | 166 | 185 |
| 30 | 163 | 168 | 210 |
| 35 | 164 | 168 | 210 |
| REG | 1 | 2 | 41 |
| 評価 | 合格 | 合格 | 棄却 |
■これが放電の状態です。色彩からアルゴンガスが封入されていると考えられます。カメラのブレも演出効果に加わっています(左)。35mA程度流した状態です。(右)
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■これで一応検査試験作業は終わりという事になります。ご苦労様でした。
1本あたりの計測はすばやく行ってください。539Cは40年ほど前に生産されたビンテージ測定器です。メインのGM(相互コンダクタンス)測定の際ですらプレート電流は数秒くらいしか流しません。それに定電圧放電管の測定能力はおまけのようなものです。50mA以上のプレート(アノード)電流を長時間流すのはトランスに負担がかかりますのでやめたほうがいいと思います。トランスの巻き線が断線しても知りませんよ。(もし切れても自己責任の原則で対処していただき管理人は一切責任を持ちませんのでご了承をお願いします。)

付録
★さらに細かい良否を見たい場合は電極間電圧の測定を行います。
より精密な検査には電極間電圧の把握は必要でしょう。539Cの回路図を眺めていると真空管ソケットの状況は各ソケットのピン番号毎に並列に接続されています。VR150MTの場合アノードは5番のピン、カソードは2番のピンです。という事は近傍のソケットの5、2番の穴ににデジタル電圧計(テスター)のピンを差し込めば正確な電極間電圧が計れます。こうしてより良品の選別が可能です。前項IでゆっくりVR電圧調整ツマミを時計回りに回してみますと正常であれば途中で電圧が止まる範囲があると書きましたがこれは感覚の問題でデジタルの場合右上がりに増加していく傾向がよりハッキリしてきます。やりかたは前項と同じです。これも5mA-30mAの電圧差が2V以内であればOKです。上の3本の中の一つの例では5mA=電極間電圧146.4V,
30mA=電極間電圧147.9Vでレギュレーションは1.5Vでした。電極間電圧(出力電圧)は150Vに対して最高で3.6パーセントの誤差でした。これも真空管規格表を見ると許容範囲内で立派な成績でした。
★定電圧放電管はれっきとした真空管屋さんで新品でNIBのものが500円〜800円くらいで買えます。長時間使ったものは性能が悪くなっているものが多いと思います。整流管と同じ消耗品と考えてもいいでしょう。素人から中古や白箱か箱なしの買い物は用心したほうがいいかもしれません。増幅管と違って見てくれだけでは良否は判断できませんのでより慎重さが必要です。
用語解説:
■定電圧放電管・・・USではvoltage-regulator tube [VR tube]とたびたび表記します。変な話ですが現在注目されている液晶モニタ用バックライトに使われている冷陰極放電管の一種ともいえます。フィラメントを用いて外部から陰極を加熱する放電管は熱陰極放電管と呼ばれていますので混同しないでください。
本来はガスを封入した電子管でグロー放電(glow discharge)領域における電流の変化に対して電圧が一定となる定電圧特性を利用したもので、かつては直流電圧安定用に盛んに用いられました。まれに冷陰極二極放電管と呼ぶこともあります。スタビロという愛称も真空管隆盛時代にはよく使われました。当時は真空管通信機のVFOのB電圧安定化や変調器のスクリーングリッド電圧安定化によく使われました。現代では大出力真空管オーディオアンプのスクリーングリッド電圧安定化にその「復権」の道が残されています。その放電の妖しげな光に魅了される人が多いはずです。個性あるアンプ創りの要素には違いありません。放電色は封入されているガスの種類によって違います。紫色はアルゴンガス、オレンジ色または赤色はネオンガスです。どの種類の球にどのガスが入っているかは私には知る術がありません。
■スタビロ・・・私は余り詳しくありませんが第2次世界大戦前から戦中のヒトラー率いるところのドイツの定電圧放電管の社名・商品名がスタビロボルトSTABILOVOLT(略称STV)でした。華々しき頃のスタビロボルト社はベルリンにあったようですが戦後はマルコニー無線電信会社に吸収されたのかOMEなのか1952年の真空管データーシートは同社の名前で出ています。
そのスタビロボルトがスタビロという呼び方の由来だったのです。私が所有している昭和17年発行の「無線受信機」という本にも若干記載されています。その本では恰も定電圧放電管の別名のように書かれています。写真左参照。写真右は大戦中と想像される時期のスタビロボルト社資料の表紙です。同じ時期らしく構造が同じです。(多くの人からのお助けありがとうございます、もし間違っていたらメールください)なお539CではSTVは測定できません。
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■VR・・・・ここではVoltage Regulatorの略です。
■電極間電圧・・・プレートとカソード間の電圧。要するに出力電圧のことです。
■シンボル・大きさ・・・例は0A2(MTサイズ)ですがSTサイズ、GTサイズもあります。

■国産球のデータ
定電圧放電管(戦前・戦中) 出所:昭和17年「無線受信機」より改訂
| 型 名 | 電極管電圧 | 許容放電電流 | ![]() |
| VRA−65/80 | 65±5%V | 15〜80mA | |
| VRB−65/100 | 65±5%V | 15〜100mA | |
| VRA−135/50 | 135±5%V | 10〜50mA | |
| VRB−135/60 | 135±5%V | 10〜60mA | |
| VRA−145/50 | 145±5%V | 10〜50mA | |
| VRB−150/60 | 150±5%V | 10〜60mA | |
| VRD−90/50 | 90±10%V | 10〜50mA |
2004年1月15日制作 2004年1月16日、2004年1月18日 2004年1月21日 2004年2月26日 2004年3月3日 2004年10月3日更新