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エッセイバックナンバー一覧

水無月慧子の冗漫なエッセイ

「その2 ホシをバラしたのは誰だ!」プロバイダーさんから借りてるアクセスカウンター

だいぶ昔、母がアガサ・クリスティーのミステリーにはまって、ハ○カ○・ミステリ文庫から新刊が出るたび購入し、何年かかかってとうとう全巻そろえてしまいました。90冊以上あります。
水無月は当時、全然興味がなかったので、ただそんなに面白いのかいと母の姿を眺めていました。
それから月日が流れ、NHKで「名探偵ポワロ」シリーズが放映されはじめると、水無月も一気にクリスティーファンになってしまいました。母が発行順に並べている大事なコレクションを、ぜひにとお願いして貸してもらい、最初から順番に読み始めました(ただしポワロ・シリーズだけ)。

何冊目を読んでいたときのことか、ポワロが語るあるセリフが目にとまりました。それはたとえば、こんなふうなセリフでした。
「犯罪者とそうでない人間とはちょっと見にはわからないよ。石見銀山事件の山田太郎をみたまえ。紳士だったじゃないか。越後屋事件の田中一郎しかり。うんぬん」。
これを読んだ最初は、「ふーん。20世紀前半のイギリスでは実際そんな事件があったのか」とうなずきつつ先を読み進んだのでした。

それから5、6冊の長編を堪能して、さあ、今度はどんな事件と謎解きが待っているのだろうかとわくわくしながら、あらたな一冊を手にしました。はじめのほうに登場人物表が出ているので、なにげなく目をとおしているうちに、なにかこう、妙な感じを受けました。デジャブーとも違うのですが、うーん。

でもまあいいや、気にせず読もうっと。ポワロの名探偵ぶりは痛快でした。
ところが、途中で、あのデジャブーにも似た感覚に引きずられて立ち止まってしまったのです。登場人物のひとり「田中一郎」の名前に、なんだか覚えがある気がするのです。感じのいい青年で、ヒロインと結ばれるといいなあ、などと思いながら読んでいたのですが……。そういえば、「越後屋」という店の名にも記憶があります(←念のためにことわっておきますが、原作ではちゃんとイギリス人の名前でした。越後屋も、たぶんイギリスにはないでしょうな。……あったりして)。

あーっ!! これ、5、6冊前に出てきた「越後屋事件」の犯人・田中一郎じゃないかーっ!
さ、作者のアガサ・クリスティー自身が犯人バラしてどうすんだーっ!
……いやしばし待て。いくらなんでも、これから起きる事件の犯人を、あらかじめその前に別の作品の中で明かしてしまうものでしょうか?
義憤にかられつつ、手当たり次第に「訳者あとがき」をチェックしてみると、或るリストが! それは、クリスティーが発表した作品を年代順に並べたもの。
あれーっ! 全然順番違うじゃないか。ハ○カ○・ミステリ文庫が出版している順番と、クリスティーが作品を発表した順番が、前後してるというか、なんかもうめちゃくちゃ! 出版権の獲得交渉の関係とかあるのかもしれないけど……。

「それじゃダメじゃん。春風亭昇太です」

確かに、いずれにしても、クリスティー本人がホシをバラしちゃっているのは事実。読者は、必ずしも一冊目から読み始めるとは限らない。なにかのきっかけで、目についたクリスティー本を読み、そしてファンになって、一冊目から手にとるかも。運が悪ければ、結局、今回の水無月のような悲劇に見舞われるおそれは充分にあるのではないだろうか。

コロンボ警部や古畑任三郎のように、最初に視聴者に犯人と犯行方法を見せておいて、探偵がどのように真相にたどりつくかに楽しみをたくした作品ならまだしも、謎解きに主眼がおかれた作品で……。

「それじゃダメじゃん。春風亭昇太です」

せっかくなので掲示板に一言コメントを書いていく

(どの作品をお読みになったか書いていってね〜)

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