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好き好きオキナワ! 好き好きホッカイドー!

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好き好きオキナワ! 好き好きホッカイドー!

「その6 Be gentleman(ビー・ジェントルマン)!2」

 私は夜の外出が大の苦手です。夜、ひとりでタクシーに乗ったり、歩くのが怖いのです。

 今からおよそ30年前のお話です。当時、私は沖縄に住んでおりました。年の頃は20代半ば。そんな私が、或るきっかけから、俳句のサークルに誘われました。

俳句に興味はあったのですが、困った問題もありました。

サークルは、夜7時頃から始まるので、終わってバスに乗って帰宅すると9時を過ぎてしまいます。私は、残念だけど、お断りしようと決め、講師の先生に率直にお話ししました。

すると「大丈夫よ。男性の会員が何人もいるし、その中には警察のひともいるから、ちゃんと車で家まで送ってくれますよ。みんないいひとだから、大丈夫よ」とのお言葉。

うーん、それなら……と、結局、参加させていただくことになりました。

初めての句会の日は、とても楽しく、私の心に「もう終わり?」 という余韻を残したまま、時間となりました。

会場を出ると、当然ですが、外は真っ暗。

全員で、歩いて3分ほどのところにあるバス停を目指して歩きました。

「じゃあ、向うの駐車場に車を入れてあるから――」
と、警察のかたがおっしゃいました。

 ――慧子さん、乗っていきなさい。家の玄関口まで送ってあげるよ。

私は、頭の中でそういう台詞を当然のごとく思い浮かべていました。

ところが、警察のかたの口から発せられた言葉は……、

「ここで失礼!」

言うが早いか、そのかたは走り去ってしまいました。

女性会員の皆さんも「じゃあ」と、それぞれご自分の道へ歩いて行かれます。

ちょっと待たんか、こら。私はどうなるんだ。私をエスコートしてくださる紳士はどこにいる?

「あ、バスが来た。失礼!」と二人目の男性がぱっとバスに飛び乗っていなくなってしまいました。あれ、三人目の男性はいつの間にか姿を消しています。

「あの、○○先生? 私……」
おずおずとサークルの先生に問いかけようとしたとき、
「あ、ほら、慧子さんの乗るバスが来ましたよ」
「え、あれ……」
おお、見れば見慣れたバスが一台、停留所に入ってきました。

しかし! やっぱり話が違うぞ、百歩譲ってバスで帰ってもいいけれど、降りた後はどうなるんだ、降りたところから我が家まで、15分はかかるんだぞ。歩道と車道の区別もないあの道を――脇道に引きずり込まれそうな危険地帯を思い浮かべると、ぞっとしました。

   結局、その日は真っ青になりながら、バス停から家まで道のど真中を走りに走って帰宅しました。

 Be gentleman.(紳士たれ)とは、例のクラーク博士が、札幌農学校に就任した折りに挨拶とした言葉です。

  だからといって札幌および北海道の男性がみんな紳士で、沖縄の男性がみんな紳士じゃないというわけではけっしてありません。県民性、道民性というより、要は個々人の気構えでしょう。

 私は第十四回新沖縄文学賞佳作を頂いた「出航前夜祭」の中に、わざわざこんなシーンを入れました。深夜、主人公の青年が、遠慮するヒロインを屋敷の前まできちんと送ってあげる、というものです。

 嬉しいことに男性会員の皆さんも拙作を読んでくださいました。

   ――何も変わりませんでした。

何度も言わせるなーっ!

Be gentleman!

(2017/1/27/Fri.)

(了)


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