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水無月慧子の万華鏡掌編小説5/  青い花

青い花
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もともと久美子は黄色が好きだった。

そんな久美子が、20歳の時、黄色を捨てた。親友にロックバンド“ブルー・ローズ”のライヴへ連れて行かれたのが、理由のすべてだった。5人組の彼らは、青を基調としたお揃いの衣装に身を包み、バラードからロックまで、硬軟取り混ぜた演奏と歌を夜空に響かせた。久美子は、その夜以来、青色が好きになった。

“ブルー・ローズ、解散宣言!!”

このショッキングなニュースが音楽好きに衝撃を与えたのは、久美子が黄色を捨ててから3か月程後だった。「音楽に対する方向性の違い」というのが解散理由だった。久美子が落ち込んだのは言うまでもない。彼女はドラム担当のタケちゃんこと竹村豊のファンだった。たとえ“ブルー・ローズ”が解散しても、タケちゃんは音楽界のどこかで活躍しているに違いない。

久美子はインターネットで彼を探した。しかし、検索ボックスに彼の名を入力しても、1件もヒットしなかった。以前は、1万2千件くらいヒットしたのに。

青で統一された自分の部屋で、久美子は途方に暮れた。DVDをプレイヤーに入れた。せめて映像の中だけでもいいから、タケちゃんに会いたかった。

ところが、どうしたことだろう。軽快な動きでドラムを叩いているのは、見たこともない青年だった。そんな馬鹿な。何度も何度も繰り返し観たDVDだ。ドラムのスティックを握っていたのは昨日まで確かにタケちゃんだった。久美子は頭の中がこんがらがってきて、ケータイを握る手を震わせながら、親友に電話した。

「タケちゃん? 誰、それ。“ブルー・ローズ”にそんなメンバーいなかったじゃん」

そんな……。私は頭がどうかしてしまったのか。ふと机の上を見ると、銀色の1輪ざしに、1輪の青い花が生けてあった。見たことのない美しい花びらの形、色合い。

「お母さんでしょ? 私の机に花を飾ってくれたの! あれ、なんていう花?」

「ああ、えーとね、“ブルー・ローズ”よ。たまたま目についたから。あなた最近青色に凝ってるでしょ」

タケちゃん、青色の精霊だったんだ。あのバンドが“青”を捨てたから、消えてしまったんだ。久美子は、ふとそう思った。

(完)

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