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水無月慧子の万華鏡掌編小説2  誕生

誕生
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 ――ねえ、ブルー7(セブン)。魂の存在を信じる?

僕にそう尋ねたのは、婦警の麻衣子さんだった。魂……不確かな、しかし決して消え去ることのない想いのかたまり。でも、それは人間だけが持つ特権だ。僕はロボット。メモリーが壊れたら、それでお終い。

――私、もしも死んだらね、この警察署の地下に保管されているスタンバイ中のロボット警官の身体を依代(よりしろ)にして、生まれ変わりたいわ。

麻衣子さんは長い黒髪を風になびかせ、僕に笑いかけた。どうして僕らは惹かれあったのだろう。人間とロボットの恋。あってはならないこと。

無影灯を頭上に見ながら、僕は麻衣子さんの面影を追っていた。

「ブルー7。これから、君の電子頭脳をリカバリーする。それで君の中から麻衣子君の記憶は消える。二度と、思い出すことはない。酷なようだが、それが君達の為だ」

頭の中が段々暗くなり、黒い闇に覆われ、やがて僕は意識を失った。

 ――ブルー7。私のこと、覚えてない?

黒髪の綺麗な人間の婦警さんが、親しげに、哀しげに、囁いた。警察署の裏庭。他に人影はない。美しい薔薇の花の咲き乱れる庭で、僕は遠い昔、このひとと会ったことがあるような気がした。何度かこっそり誘い出されているうちに、

「……麻衣子、さん……?」

信じられないことに、リカバリーされた僕の電子頭脳に、彼女との記憶が甦ってきた。

「電子頭脳を物理的に破壊しない限り、君から麻衣子君が消えることはなさそうだな」

博士が言い、今度は無影灯の下に寝かせられることなく、警視の銃弾が僕の頭を撃ち抜いた。麻衣子さんの悲鳴。暗くなっていく視界。暗闇。

だが、次の瞬間、僕は閃光を見た。目が追いつけないほどのスピードで、僕はどこかを目指していた。ドーン、と衝撃が来て、僕はまばゆい光の中で目を覚ました。

小綺麗な白い部屋。壁にはぐるりと、スタンバイ中のロボット機動隊員が保管されていた。

 ――私、もしも死んだらね、この警察署の地下に保管されているスタンバイ中のロボット警官の身体を依代にして、生まれ変わりたいわ。

いつかの麻衣子さんの声。僕は自分を閉じ込めているカプセルを開けた。

   
(完)

せっかくなので掲示板に一言コメントを書いていく

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