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水無月慧子の万華鏡掌編小説4/  天窓

天窓
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 その古い屋敷の一室に、天窓があった。色調を抑えたステンドグラスである。太陽の光が乱反射しながら、彼の目を射た。

「どうした、風神-01(ふうじんゼロワン)? 取り引きに関与していた連中はすべて逮捕した。引き上げるぞ」

 背後で早瀬警視の声がした。

「何か気になるものでもあるのか」

 風神が動かないので早瀬が並びかけて来て、一緒に天井を見上げた。

「天窓か。なかなか綺麗だ」

「私には無影灯に見えます。あなた方が、無味乾燥なロボット機動隊員だった僕の電子頭脳をリカバリーし、すべての記憶を消した日に見た……」

「そういう記憶は残っているのだな」

「あなた方は、僕を人間の顔を持つアンドロイドに造り替え、新しい記憶を注入した。ホストクラブに送り込み、ナンバーワンホストに仕立て、囮捜査に利用している」

「……」

「あの天窓、むかし似たようなものを見たことがあるような……」

「どこで」

「忘れました。あなた方が忘れさせたのではありませんか。ただ、こうして天窓を見上げていると……誰か、女のひとがそばにいたような……」

「そういえば、本官の父が言っていた」

 早瀬警視が口を開いた。

「ロボット機動隊員が人間の婦警に恋をした。婦警も彼に思いを寄せた。それに気づいた本官の父達は、ロボットの記憶を破壊することで、馬鹿げた事象を消し去ろうとした。それを察したふたりは逃亡し、遥かかなたの教会で結婚式の真似ごとまでした。だが、やがてふたりは連れ戻された」

 ふたりだけの結婚式。あの教会にも天窓があった。彼女は、確か長い髪を後ろで束ねて……顔が思いだせないが……。だが、ここまで記憶が戻ってきたのだから、早瀬警視達が放ってはおかない。

 天窓の光が、また僕の記憶を消すだろう。風神は、光る天窓を、しばし見つめていた。

                 
(完)

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