昆布の里からサイエンス indexへもどる
昆布の里からサイエンス

地域活動編

地域に密着した授業の取り組み



北海道南茅部(みなみかやべ)高等学校
渡辺儀輝(わたなべよしてる)


はじめに

 地域に密着した高等学校教育の必要性が叫ばれて久しい。特に理科・社会科分野では、この点の教育について小中学校より手薄になっているという指摘もある。また、平成6年度から地球環境全体を見通し、環境の保護の重要性を強化するカリキュラムに上記2教科は改訂されたばかりである。人間生活による環境破壊、その保護に関する記述は、どの教科書にもあり、社会科の中では「現代社会」の中で、理科の中では「生物IB」「化学IB」「地学IA」の中で、これらの事項を扱い、地球に対する人間の関わり合いを学習することになっている。

 北海道南部に位置する本校、北海道南茅部高等学校の場合、全生徒が昆布漁を中心とする、自然に恵まれた南茅部町のみから通学しており、地域性に密着した質の高い授業を展開できやすい状況にある。単なる教室の中の座学だけではなく、環境教育の名のもと、実験・野外実習を数多く取り入れた授業展開を本年度は実施してきた。本報告は、それらをまとめたものである。

 第1学年の必修科目である現代社会・生物IBの中で、環境教育を目的に、最近建設された大型可燃ゴミ・不燃ゴミ処理施設『南茅部町クリーンセンター』の見学を実施。第2学年では、必修科目の化学IBの中で、化学に対する興味関心を高める目的で、地元産昆布を利用した化学実験を実施。第3学年では必修科目の地学IAの中で、防災意識の高揚を目的に『駒ヶ岳と南茅部町の防災について』の講演を実施してきた。生徒達にとって入学から卒業までの3年間という限られた期間の中で、理科・社会科のみならず、南茅部町役場と連携をとり、南茅部町民としての地域に根ざした環境教育を連動しながら実践するという試みは、本年度ある程度の成功はおさめることができたと考えている。実施内容・結果・今後の課題などの詳細は本文を参照されたい。

 今回報告する実践は、南茅部町の強い協力体制がなければ実現不可能であった。北海道南茅部高等学校の教育活動に対する深い理解と、惜しみない協力をしていただいた飯田満町長をはじめとする町関係各位に深く感謝いたします。





第1学年:生物IB

南茅部町クリーンセンター施設見学

概略
身近な南茅部町のゴミ問題を通して、生態系の均衡や環境保全について考えさせる。
クリーンセンターとは、一般廃棄物処理施設のことで、おもに大型粗大ゴミ、不燃ゴミ、空き缶などの処理を行っている公共施設である。事前学習として、「生態系と環境の保全」「地球環境問題」「南茅部町のゴミ問題」を学習し、環境問題が身近な問題であることを学習する。事後指導は、感想文を記入し、理解を深めさせる。


クリックすると大きな写真へ飛びます
センター長よりセンター全景大型破砕機
焼却炉の炎埋め立て地生徒代表






第2学年:化学IB

南茅部町特産の昆布を教材とする化学実験

概略
 本校の化学IBは年間実質授業100時間(考査・まとめを含めると120時間)のうち、生物化学実験室における化学実験を50時間実施している。教科書を中心にして、生徒に対し化学的なもの見方を育成するという目標を設定し、実際にものに触れ、数々の化学反応を通して、原子・分子レベルで物質を見ることができる力を教授している。3学期の考査で教科書の全範囲を終了するように、年間計画をたて、ほぼ本年度は計画通りに授業は進行できた。終業式までの2時間の授業を使い、化学という学問が日常生活と遊離したものではなく、生活に深く入り込んだ、影響力の大きな学問であることを認識させるため、地域に密着した教材、すなわち昆布を使った化学実験を実施した。
 昆布の代表的な成分であるヨウ素を抽出する方法は、古くから高等学校で学ぶ化学の授業に取り入れられており、また、昆布から直接紙を作る方法は最近開発されたものだが、高校の化学教師を中心に大変注目を集めている。昆布を食べ過ぎると、その中のヨウ素分の影響で甲状腺肥大となり、バセドー氏病にかかりやすくなる、という事実もある。これら2つの手法は、生徒の興味関心を高める効果も十分期待できる化学実験である。




実験方法
1.昆布からヨウ素を取り出す
1.南茅部産早煮昆布を、短冊状に切り、各班に1gずつ配布する
2.蒸発皿の上から10分間、完全に灰になるまでガスバーナーで強熱する
3.灰化した昆布を蒸留水15mlで煮る(ヨウ素イオンが溶け出す)
4.濾紙で簡単に濾過し(濾液は透明)、反応を見やすくするため、白い紙をしいたシャーレの上に濾液をあける
5.ヨウ素イオンの電子を奪うために、酸化剤として硫酸酸性過酸化水素水を入れる
6.ヨウ素が遊離してくる(うっすらと茶色くなる)
7.ヨウ素であることを確認するため、デンプンをひとさじ入れると、ヨウ素デンプン反応により紫色に変化する


2.昆布から紙を作る
1.南茅部産早煮昆布を、2cm角に切り、各班に1gずつ配布する
2.5%炭酸ナトリウム水溶液30ccで昆布を煮込んで、完全に溶かす
3.ガーゼとガラス棒2本を使ってこしとる(アルギン酸ナトリウムを取り出す)
4.10%塩化カルシウム水溶液25ccにアルギン酸ナトリウムをガラス棒で攪拌しながら
ゆっくりそそぎこんで、ゲル化させる(アルギン酸カルシウムの生成)
5.全班のアルギン酸カルシウムを回収し、ジューサーミキサーで5秒間攪拌する
6.はがき型枠にはさめた金網を使って、攪拌した溶液をすく
7.新聞紙などにはさみ、アイロンをかけ、十分乾燥させる
8.はがきの半分の量の昆布紙が得られる



クリックすると大きな写真へ飛びます
昆布を焼く灰化させる水で煮る
Na2CO3で煮るアルギン酸を濾過紙の完成





第3学年:地学IA

講演「駒ヶ岳と南茅部町の防災について」から

駒ヶ岳の火山噴火と南茅部町の防災体制を学ぶ

概略
 昭和22年(1947年)の噴火以来久しく活動をしていなかった駒ヶ岳が、平成7年再び噴火を開始し、被害は少なかったものの、駒ヶ岳を有する5つの町村(南茅部町を含む)は防災体制を引いて、警戒にあたりました。雲仙普賢岳の噴火、奥尻での地震や阪神大震災など、近年起こった大災害から危機意識が叫ばれ、またそのときの適切な行動や防災意識の必要性が強く見直されています。地域の専門的な知識や技能を持った民間の人材として、南茅部町の防災担当の方を招き、講演してもらうことにより、生徒の「駒ヶ岳の活動と南茅部町の防災」について理解を深め、高揚を図りたいと思います。講演では駒ヶ岳の噴火のビデオ上映と、防災体制について講演をいただき、事後指導として、生徒に防災に関するアンケートを記入してもらいました。


クリックすると大きな写真へ飛びます
駒ヶ岳の近況説明メモをとる生徒達ビデオ上映