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昆布の里からサイエンス

物理IA編

実験中心物理VSセンター試験



北海道南茅部(みなみかやべ)高等学校
渡辺儀輝(わたなべよしてる)





こんにちは。会員の皆さん、科学教育にがんばってますか?  新しく新学期も始まりまして、私は今年は担当学年である「化学IB」と「生物II」に平成10年度は燃えようと思っています。もちろん物理IAも担当します。生物IIの課題研究をどうしようかな?と頭を悩ませている最中ですけど、選択科目で16名と少数なので、実験書を片手に探究的な活動をさせてみようと思っています。当然化学IBは1クラス年間50時間の化学実験を予定しています。  昨年度(平成9年度)に担当した物理IAも無事終了。一昨年同様エネルギー・情報・運動・波動・現代社会と物理の5単元を浅く広く、実験を中心にすえて学習してきました。HR担任としての仕事の量が増えてしまったので、一昨年と若干の変更をした程度です。変更した点はサークルのホームページに掲載されています「昆布の里からサイエンス物理IA編」の中でリニューアルして紹介しようかと考えています。

 さて、実験中心の物理IA授業を実施しているわけですが、とある方から昨年、ある研究会でこんなことを尋ねられました。

「実験、実験っていうけど、おたくの授業でセンター試験に通用するの?」

ムッ・・・。「俺は受験のために物理教えてんじゃねぇ!!」  でも、どうかな?(チョット不安・・・)センター試験を受ける生徒はうちにはいません。ほぼ全員が就職か専門学校へ行きます。郡部の学校ではよくありがちな「センター試験って何?」という生徒がほとんどです。  私の物理IAは、受験のための授業ではありません。知識ではなく、科学の素晴らしさを知り、科学的な見方、センスを養うことを念頭に授業に立っています。南茅部高校のカリキュラムが1年生に生物IB、2年生に化学IB、3年生に物理IA、地学IA、物化生地すべて必修にしているのは(理科卒業単位は最低12単位、他に選択として2年時に生物II、3年時に化学IIを入れています)、すべてこの目標に立ってのことです。昨年の3年生が入学したときの、高校入試の理科の平均点は約3割台。全道、全国的な学習レベルとしては確かに低いかもしれません。しかし、南茅部の自然に囲まれて生きてきた彼らは、私以上に自然(特に海)に関する興味・関心・知識があります。  しかし、私も「井の中の蛙」です。このようなサークルニュースの紙面を借りて、日々の授業を公開し、全国から意見をもらおうと思っていますが、北海道の片隅にある南茅部高校の実験中心の物理IAが、全国的な試験でどれほど通用するのか。ちょっと知りたい気もしました。予備校もない、塾も家庭教師も参考書も問題集もない中で純粋に何点とれるのか。知ったから、どうのこうのというのではありません。私のスタイルを変えるつもりはありません。  じゃあ、どうやって実施するか?色々考えましたが、次のような方法で、物理IAの授業を受けている生徒にセンター試験を受けてもらおうと考えました。

1)1学期中間考査範囲は「情報」、期末は「運動」、2学期中間は「光と音」期末
  は「エネルギー」の範囲の平成9年度センター試験を定期考査内に紛れ込ませる
   ※ 授業内容・定期考査範囲とセンター試験範囲を一致させる。

2)この問題はセンター試験からの出題です、とは一切言わない(拒否反応をなくす)
   ※ もちろんヒントも出さない。授業からの知識で解答する。

3)定期考査の配点はセンター試験の配点とは無関係につける。
   ※センター試験の配点は3,4点と高いのです。

4)3学期期末の「現代社会と物理」単元は、教科書を離れた範囲を学習してるので
  出題しない。
   ※物理学の現在・過去・未来、卒業課題研究を実施しているためです。

5)エネルギー40点、情報30点は必修なのでそのままであるが、運動・光と音は
  選択のため、どちらか高い方を加えた点数を合計とする。

 センター試験のような一発ものではなく、あくまで授業や考査と関連づけて実施しました。合計がでるまで1年間かかる壮大な試験です。







実施結果


 

(1)平均点・度数分布(全国平均は67.5点)


エネルギー情   報運   動光 と 音合   計
配  点40点30点30点30点100点
南茅部高校平均点14点14点13点14点45点




(人)
0〜 9点171520
10〜 19点33303545
20〜 29点16
30〜 39点18
40〜 49点
21
50〜 59点
60〜 69点
70〜 79点
80〜 89点
90〜 109点
南茅部高校最高点40点27点23点30点93点



(2)正答率 (0%〜×、30%〜△、50%〜○、70%〜◎)



分野番号出題内容・解答 正答率(%)




水の位置エネルギーは水力発電に利用 11  ×
太陽電池は光エネルギーを電気へ変換79  ◎
石油・石炭は化学エネルギー貯蓄 38  △
エネルギー保存の法則 52  ○
宇宙への熱放射で地球は温度一定 54  ○
位置エネルギー=m×g×h 36  △
電気エネルギー=V×A×秒16  ×
消費する電気エネルギー>した仕事11  ×




釘を磁石へ・・・近い磁針の極が近づく30  △
N極をつけた釘を磁石へ・・Nが近づく41  △
1,2をふまえた情報の伝達 53  ○
1,2をふまえた情報の解釈 58  ○
連続的な変化はアナログ量16  ×
不連続な変化はデジタル信号52  ○
デジタル信号は雑音の影響少ない47  △
CDの信号はくぼみで表現58  ○
フロッピー表面には磁性体の粉末64  ○




雨は斜めに降るようにみえる・・・相対運動 83  ◎
ロケットの推進・・・・運動量保存の法則14  ×
自転車は坂道で速い・・・エネルギー保存 29  ×
物体に重さがある・・・万有引力81  ◎
v−tグラフから移動距離を算出10  ×
等速落下中は重力=空気の抵抗 29  ×
落下中は空気の抵抗力と落下速度は比例48  △
パラシュートを開くと抵抗力大41  △





フィルムに映るのは倒立した実像 71  ◎
ピントを合わせる・・レンズを動かす30  △
近い物体を撮影・・・カメラの前に凸レンズ 38  △
水中の物体は浮き上がって見える:屈折率38  △
水中から音は聞こえない・・水面で反射27  ×
ものかげの話し声・・・解説49  ×
音は固体中でも伝わる33  △
救急車の音程の変化87  ◎





 平均点は全国平均よりかなり低いですが、この全国平均は「センター試験を受験する=国公立大学へ進学する」という意識を持った受験生の平均点であり、単純に比較すべきものではありません。それよりも、高校入試で3割弱の理科の点数をとって入学した生徒が全国的な試験で45点をとることができる、という方が特筆すべきでしょう。満点近い生徒もいます。そしてもちろん10点台の生徒もいます。度数分布は30〜49点の間に固まっているように見えますが、50点以上が16人もいることが、私は驚きだったのです。

 卒業課題研究を含めた実験を中心とした物理IAは、教科を担当した私だから思えるのかもしれませんが、間違いなくあの卒業していった3年生を成長させました。センター試験なんか知らない、私もその試験内容について深く授業で演習をしない、周りに踊らされない、実験を中心に据えた大きな目標を持った授業を受けている。手前味噌かもしれませんが、とある方に対する答えは出せると思います。

「ええ。もちろん通用しますよ。しかもペーパーだけ解答できるような小手先だけではありませんよ」